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インディーズ官能小説作家・沢見独去のブログ

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『あこがれの姉』(1)/寝取られ男のブルース5

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寝取られ男のブルース第五話『あこがれの姉』を今週から毎週日曜日、連載します! 十歳上の姉(人妻)が……というお話。関係性が変わっただけで、あとはマンネリだなあと、自分でも思いますが、お許しを~^^;

次回は14日(日)にアップします!!


寝取られ男のブルース第五話
「あこがれの姉」(1)  沢見独去




 家のダイニングルームに、久しぶりに明るい雰囲気が戻った。
 姉が、帰ってきているのだ。
 僕はうきうきと心を躍らせていた。
 十六歳の僕よりも十歳年上の姉は、一年前、二十五歳で結婚して、この家を出て行った。
 姉の名前は、湯島明菜、いや、今は変わって中嶋明菜だ。
 弟の僕が言うのもなんだけれど、姉は美人だった。愛嬌のある目元、通った鼻筋に、ふっくらした唇。肌は透きとおるように白く、プロポーションは抜群。
 両親が共働きのうちの家庭で、姉は母親がわりだった。僕は彼女に懐いていた。それこそ、好きで好きでたまらないほどに。
 もちろん、そんな気持ちを出すほど、僕は愚かじゃない。
 大学を出て働き出した姉は、一年ほどで結婚した。相手は中嶋賢一という。大学のサークルの先輩。大学の時から何度か家に連れてきていたので、ぼくもよく知っていた。
 いい人だ。
 この人なら、姉を任せられると思うほど。
 さわやかな笑顔で、やさしそうで、背も高く、某有名企業で働く賢一さんは、さすが姉が選んだ男だと納得するしかなかった。
 姉が嫁いで、両親と僕だけになった家は、灯りが消えたように寂しかった。
 それからの僕はひたすら高校と家を往復する毎日だった。
 潤いも、張りあいも、やる気もなく。


 夫の賢一さんが一ヶ月間の海外出張だとかで、まだ子供もいない姉はひとりでいてもしょうがないってことで、実家に戻ることにしたようだ。
 久しぶりに姉の手料理を食べながら、食卓に座る笑顔の彼女を見て、僕は心の底からうれしかったんだ。最後に見た時から、髪型を変えたようだ。ほとんど黒に近い濃い茶色の、肩の上で揃えたボブカット。理知的なそのヘアスタイルは、姉によく似合っていた。
 楽しかった。
 帰ってきた当日に、姉はにこりとやさしく笑って言ったものだ。

「弘、彼女できた?」

 僕は思いっきり首を振った。

「高校にいい子なんていないよ」

 お姉ちゃんに勝てるような女の子はいないよ。そう言いたかった。
 彼女はあきれたような顔をして、それから僕の頭を小突いた。

「だめよ、弘。ちゃんとしないと」

 その態度は、一年前までの一緒に住んでいた姉と、まったく変わりはなかった。
 僕はそんな姉に曖昧にうなずいた。


 ダンナがいないので、愛しい弟のところに帰ってきてくれたんだと思っていた。
 そのバカな思い込みが崩れ去るのは、彼女が帰ってきてから、一週間ほど経った頃だ。
 僕は高校から帰ると、姉の手料理を二人で食べた。両親はあいかわらず共働きで、今日も遅いようだった。

「ねえ、お姉ちゃん。今度の休み、買い物、行こうよ。なんなら、映画も観る?」

 僕は流行の洋画のタイトルを出した。
 姉はあきれたような顔になる。

「お姉ちゃんをデートに誘ってどうするのよ……」

 それからくりくりした垂れ気味の目で上を向いて、考えた。

「うーん。でもわたしもあれ観たいし、行こっか」
「やった」

 僕は満面の笑み。
 それから自分の部屋に引き上げてからは、スマホのゲームに熱中していた。
 その時に僕は、気づいてしまったんだ。
 なぜあの時に気配を感じてしまったんだろう。あとあとまで僕は、繰り返し後悔の念に襲われることになる。
 もう外は暗かった。
 自室の机の横の窓からは、家の玄関が見える。
 そこからこっそり出て行く姉を、僕は見つけてしまったんだ。
 なにも言わずにどこに行くんだろう。
 そう思ってしまった僕は、思わず部屋を出て一階へ駆け下りていた。
 コンビニに買い物に行くんだろう。
 そう思ったが、なぜかあとをつけてしまった。暗闇にまぎれて、姉の後ろ姿を追ってしまった。
 彼女は白いノースリーブのシャツに、デニム素材のミニスカートを身につけていた。スカートは短くタイトで、ぷりっとした姉の尻をきつくおおっていた。うしろから見ていると、そのお尻が左右に揺れ、半分以上見えている白い太ももがやわらかそうだった。素足に白いミュールをつっかけている。
 よく考えたら、さっき一緒に食事をしたときとは、格好が違う。
 わざわざ着替えたのだ。
 しかもちらりと横顔を見ると、化粧までしているようだ。
 どこに行くのだろう。
 なぜだか胸騒ぎを覚えながら、僕は姉についていく。




 姉は、家から十分ほど歩いた場所にある公園に、入っていく。
 闇に沈んだそこは、ひとけがまったくなかった。
 その木々に囲まれた一角。
 迷うことなく、確かな足取りで、姉はそこへ向かう。
 薄暗い中には、木のベンチ。
 そこには、男が、座っていた。
 誰だ? なんで姉ちゃんが……?
 僕は疑問にむち打たれ、焦燥に駆られながら、一心にそちらを見る。見つからないように暗闇に紛れて背を低くして近づき、腰くらいの高さの植えこみの陰に隠れる。

「よう。来たか」

 男が姉に声をかける。その声は尊大で、少しバカにしたような響きが含まれていた。
 僕の心臓が早鐘を打つ。口をしっかり閉じていないと、そこから飛び出してしまいそうなほどに。
 植えこみの陰に膝を突いてうずくまり、葉のあいだからそちらに目をこらす。
 目が慣れてきたのか、ようやく男の顔のつくりが見えてくる。
 まだ幼さを残した顔に、やんちゃそうな目の光。髪型は短い毛をつんつんと立てていて、金色に染められていた。ぶかぶかのトレーナーとスウェットのパンツ、首や手首に、ゴールドのチェーンをじゃらじゃらとつけている。
 そんな格好で、大きく脚を組んでいる。
 この顔、どこかで見たことがある。
 僕は必死に思い出す。

「結婚してから、つれないじゃねえか」

 彼女はなにも言わない。
 黙ってベンチのとなりに座った。
 デニムのタイトミニから突き出た生脚が、薄闇の中で白く光る。

「おまえの体を思い出して、夜も眠れなかったぜ」

 ふざけたように言う男に、姉はか細い声でささやいた。

「や、やめて……」
「なに言ってるんだ。明菜も俺のこと、忘れられねえんだろ」
「……」

 姉はうつむいてしまう。
 その顔を覗きこむようにして、男はにやりと唇を歪めて笑った。
 その笑い顔を見て、僕は思い出してしまった。
 奴は……奴は、僕の中学の同級生だ。

「おい、明菜。しゃぶれ」

 傲慢な男の命令口調。

「こ、ここで?」
「当たり前だろ。おまえの家はあの弟がいるし、俺の家にもババアがいる。どっちもだめだろ」

(つづく)

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