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インディーズ官能小説作家・沢見独去のブログ

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人妻たちの饗宴 The Old Crow Bar (9)

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無料連載の官能小説です。郊外のバーを舞台に、マスター裕次と、さまざまな人妻たちの関係を描きます。今回から新しい章へと入りました!

次回は12/15に公開します!

下の続きを読むからご覧ください。

人妻たちの饗宴―The Old Crow Bar』 (9) 沢見独去



第3章 奈々

 今宵も「オールドクロウ」が開店する。
 裕次がカクテルグラスを磨いていると、今日初めての客が、ドアを開けて入ってきた。
 沙織だ。
 今日はグレーの膝丈のスーツに白い襟つきのシャツと、いつもより少しフォーマルな装いだ。
 気軽に声をかけようとしたとき、その後ろから男が入ってきた。珍しそうに酒の瓶のならぶ棚を眺めている。
 チャコールグレーのスーツにストライプのネクタイ。七三分けの髪型に四角い銀縁メガネ。典型的なサラリーマンだ。
 カウンターに二人並んで座る。
 沙織が妖艶に笑って紹介する。

「こんにちは、マスター。夫です」
「はじめまして」

 裕次のあいさつに頷きで返して、また再び並ぶ酒を見渡した。

「わたしはギムレットをいただきます。あなたは?」
「そうだなあ。あまりこういう店は来ないから……」

 そうつぶやくと、裕次のほうに向き直った。

「国産のスコッチはありますか。それを水割りで」
「かしこまりました」

 裕次が手際よく酒を用意しているあいだに、夫婦の会話が漏れ聞こえてくる。

「こんな所に、こんな店があったんだなあ」
「ふふ。いい感じでしょ、このお店」

 まず水割りを作り、それからギムレットをシェイクする。

「沙織はよく来るのか」
「たまに……かしら。ね、マスター」

 裕次はその言葉に笑顔で頷くと、カクテルグラスにギムレットをそそぎ、それぞれの前にグラスを置く。
 夫婦は軽くグラスを合わせて乾杯した。
 ほんの数日前、この店のトイレで、裕次に貫かれてよがり声を響かせていた沙織が、本来のパートナーと座って酒を呑んでいる。
 不思議な感じだった。
 目の前で夫と会話をかわす沙織の、やわらかい唇や、大きな胸の感触を思い出してしまい、裕次は思わず勃起しそうになる。ごまかすように後ろを向いて棚に酒を戻した。
 夫がトイレに立った隙に、彼女がカウンターへ身を乗りだしてささやいた。

「今日は夫につきあわされて上司の栄転パーティに行ってたの。気を遣いすぎて疲れたわ。駅まで戻ってきたら、夫がもう少し呑みたいって言うから、連れてきちゃった」

 大きな胸がスーツの中で揺れる。
 裕次も顔を沙織のほうに近づけて、ついでにその胸をやんわりと撫でながら、ささやいた。

「じゃあ、今晩は沙織をかわいがってやれないな」
「もう。ばか」

 いたずらっぽく笑いながら、彼女は裕次の手をつねった。


 それぞれ同じものを三杯ずつ呑んだ二人は、席を立った。
 勘定は、夫が払った。
 もう彼の顔は真っ赤になっている。しかし最後まで態度が崩れることはなかった。
 沙織の顔もほんのり赤い。

「ごちそうさま、マスター。また来ます」
「ありがとうございました。また夫婦でいらしてください」

 二人を見送るためにカウンターを出て、ドアを開ける。

「あら。忘れもの」

 夫が先に出たところで、沙織だけが戻ってくる。
 夫を外に残してドアが閉まる。
 彼女が抱きついてきて、そのまま唇を押しつけた。
 一瞬の口づけのあと、彼女がささやく。

「ほんとに夫婦で来ていいのかしら」

 妖艶に笑うと、コロンの香りを残して、今度はほんとうに帰って行った。


 しばらくは客が来なかった。十一時をまわったころに、OL風の三人組がやってきて、テーブル席についた。その直後に若いカップルがカウンターに。それからしばらくして、二十代の会社帰りのサラリーマンが一人で。
 酒の用意で忙しくなった。
 客の流れは波に似ている。来るときは連続して来るが、長年この稼業をやっている裕次にも、それがいつなのかは、予想はつかなかった。


 その次にドアベルが鳴って、奈々があらわれた。
 昼間のカフェを切り盛りしている時のカジュアルなファッションとは違って、滑るような素材の黒のスリップドレスだ。大きくあいた胸元が、細かに光るビーズでデコレーションされている。スカートの裾はふわりと広がっていて、わずかな風でも下着が見えそうなくらい短い。細い足にはなにもはいていない。足元は黒のピンヒール。
 そんな彼女に目を見張る裕次ににやりと笑って、彼女は店を入ったところで、くるりと一回転した。スカートが広がって、形のいい太ももがさらに見える。
 その口が大きいエキゾチックな風貌と、スレンダーな彼女の肢体に、それはよく似合っていた。

「じゃーん。どうだ。たまにはあたしもお洒落しなきゃね」

 昼間に由里と思わぬ情事をし、また沙織が夫婦で来たことで、奈々が来ることをすっかり忘れていたが、そんなことはおくびにも出さずに裕次は頷く。

「おきれいですよ。女優さんみたいだ」
「あら、お世辞でもありがと」

 彼女はファッションに似合わない豪快な笑い声を上げると、カウンターに腰かけた。

(つづく)



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プロフィール

Author:沢見独去

      
電子出版で、自作の官能小説を発表しています。小○生ものをこっそり書いていたのがばれてamazon KDP(Kindle ダイレクトパブリッシング)から追放されて放浪中。

 
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