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『あこがれの姉』(4)/寝取られ男のブルース5

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寝取られ男のブルース第五話『あこがれの姉』、第4回です。
次回は9/4(日)にアップします!!


寝取られ男のブルース第五話
「あこがれの姉」(4)  沢見独去




 翌朝、顔をあわせた姉は、まったくいつもと変わらない、やさしく美しい彼女だった。
 僕はその姉の顔をまともに見られなかった。見てしまうと、きれて口汚く避難してしまいそうで。そして泣いてしまいそうで。
 昨夜の姉の淫猥な姿が、目に焼きついて離れない。
 そしてそこには、嫉妬や怒りとともに、めくるめく性的な興奮が含まれていることに、僕は気づいていた。
 もう一度、姉が乱れる姿を見てみたい。
 お姉ちゃんが、僕と同じ年の男に、乱暴に犯されている姿を、じっくり観察したい。
 そんな切望が、払おうとすればするほど、どんどんつのっていく。
 いけないことだとわかっていても、あとで真っ黒な後悔に苛まれることをわかっていても、僕はその暗い熱願がくつくつと胸から涌き出てくるのを、どうしても無視できなかった。
 そんなことを弟が思っているとはつゆとも知らずに、彼女は笑顔でこちらに話しかけてくる。

「だいじょうぶ、弘……なんか、ぼんやりしているようだけど」
「……」
「弘ってば」
「あ! ああ……ごめん……」

 姉が形のいい眉をひそめる。

「どこか調子悪いの?」
「あ、いや。なんでもないよ……だいじょうぶだから」

 心配顔の姉の目線を振り切るように、自分の部屋に戻った。
 高校の制服に着替えながら、僕は昨日の二人の最後の会話を思い出していた。
 別れ際、あの男は姉にこう言っていた。

「また明日な、明菜……おれ、仕事休みだからよ……昼間ならおまえの家、誰もいねえだろ」
「えっ? で、でも……」

 おろおろとする姉の耳許に唇を寄せて、松尾がにやりといやらしく笑いながらささやいた。

「昼過ぎに行くよ。また明菜をむちゃくちゃ気持ちよくさせてやるぜ……な?」

 それに対して、姉はかすかに、こくりとうなずいた。その激しい交情のあとの赤らんだ顔の奥が、淫靡な期待に輝いているのを、弟の僕は敏感に感づいていた。
 つまり、あいつが家に来るのだ。
 また姉と淫らなことをしに……。


「じゃあ、いってきます」

 登校する僕を、姉は笑顔で玄関まで送ってくれた。

「いってらっしゃい。気をつけてね」
「うん」

 だが僕は学校に行かない。
 行ける訳がない。
 初めて僕は、学校をさぼった。
 昼過ぎまで男は来ない。
 そのまま家の前を迂回して、裏口にまわる。
 姉の気配を気にしながら、僕は自宅に忍びこみ、自分の部屋に戻った。
 このまま昼まで松尾が来るのを待つつもりだった。
 窓の隙間からそっと顔を覗かせると、姉がどこかに出かけていくところだった。
 買い物でも行ったのだろう。
 僕の心臓はもう早鐘を打っている。
 今から、期待で愚息が元気になろうとしている。
 それを必死で落ち着かせながら、僕はその瞬間を、ひたすら待った。
 頭の中には、姉の結婚相手である賢一さんの、やさしそうな笑顔が浮かんでいた。
 あの人を、姉さんは裏切っているのだ。
 なにも知らずに長期出張に出かけている彼は、まさか妻が自分の留守の間に、よその男とあんなことをしているなんて、想像もしていないに違いなかった。しかもその不倫相手は、僕と同い年なのだ。
 賢一さんが、姉との結婚を告げに家に来た時のことを、僕は思い出していた。それはほんの一年と少し前だ。
 大学時代から、彼氏として何度も家に遊びに来ていたし、家族ぐるみで出かけたこともある。だから慣れているはずだが、やはりその日の賢一さんはいつもとは違い、少し緊張してこの家の食卓に座っていた。
 同じく緊張気味の両親が目の前に座る中で、姉だけが普段と変わりなく明るく笑顔を振りまいていた。
 ぎこちない空気の中、賢一さんは僕たち家族に向かって、軽く頭を下げた。

「明菜さんと、結婚させていただく許可をいただきに、今日は来ました」

 家族が沈黙する中、彼はさわやかな笑顔で姉を見た。

「明菜を、きっと幸せにします……」

 姉の目が潤んでいた
 こんなことに疎い父が、母に肩をつつかれてようやく答えた。

「う、うん……明菜を、よろしく、頼むよ……」

 あの時の幸せそうな姉の笑顔を思い出す。
 それとともに、恋人もいないのに、自分が伴侶に裏切られているような、そんな嫉妬と憤りさえ僕は感じている。
 しかしこれからどうするかが、問題だ。
 制服のままベッドに仰向けに寝転びながら、あれこれ思案する。
 おそらく姉は、一年前まで自分の部屋だったところに、男を通すだろうと予想する。結婚までに使っていたベッドや机、家具類などは、いまだに残っている。結婚と同時に新居に引っ越したので、古い家具はいらないのだそうだ。捨てるわけにもいかず、いまだそのまま部屋に置いてある。
 実家に帰ってきた姉は、当然のようにそこを使っていた。
 僕は時計を見る。
 正午をまわったところだ。
 決めた。
 先に姉の部屋に忍びこむ。他の場所に行った時は、その時でまた考えよう。
 僕は高鳴る心臓とともに、自分の部屋を出て、反対側の奥にある姉の部屋に入った。
 作りつけのクローゼットがある。僕の部屋と同様、扉はルーバー式になっているので、隙間から外が見えるはずだ。
 クローゼットのドアをあけて、古くて姉が持って行かなかった衣類の隙間に座りこむ。
 正面には、姉のベッドが見える。



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